愛知県に住む私たちにとって、大雨や台風は毎年のように心配になる自然災害ですよね。
特に最近は、「これまで経験したことのない大雨」という言葉をよく耳にします。実際、愛知県や名古屋市では、過去にも何度も大きな水害を経験してきました。
今回は、私たちの住む愛知県・名古屋市で過去に起きた大雨災害の記録を振り返りながら、実際に被災された方々の体験談を通して、家族みんなで取り組める防災対策についてお話しします。
過去の災害から学ぶことで、大切な家族を守るための備えを一緒に考えていきましょう。
過去に起きた大雨災害の記録

愛知県や名古屋市は、実は過去に何度も大きな水害に見舞われています。私たちの記憶に新しいものから、少し古いものまで、主要な災害を時系列で見てみましょう。
伊勢湾台風(1959年9月26日)
被害の概要
・死者・行方不明者:愛知県内で3,260人
・全壊・半壊家屋:約13万棟
・高潮による甚大な被害
今から60年以上前の災害ですが、愛知県にとって最も大きな自然災害の一つです。台風による強風と高潮で、特に名古屋市南部や海部地域で壊滅的な被害を受けました。
東海豪雨(2000年9月11日〜12日)
被害の概要
・総雨量:567mm(2日間で年間降水量の約3分の1)
・名古屋市の約37%が浸水
・死者:10人
・床上浸水:22,894棟
・床下浸水:46,943棟
2000年9月11日の夕方から降り始めた雨は、まさに「記録的」な豪雨。名古屋市西区では新川の堤防が決壊し、一夜にして街が水没。ナゴヤドームの周辺も浸水し、多くの住宅が水に浸かりました。
特に印象的だったのは、名古屋駅周辺の地下街にまで水が流れ込んだことです。普段は安全だと思っていた場所でも、水害の恐ろしさを改めて感じさせられました。
平成20年8月末豪雨(2008年8月28日〜30日)
被害の概要
・1時間最大降水量:146.5mm(岡崎市)
・死者:2人
・床上浸水:2,477棟
・床下浸水:14,108棟
特に愛知県西部から東部にかけて激しい雨が降り、岡崎市では1時間に146.5mmという猛烈な雨を観測しました。これは、バケツをひっくり返したような雨が1時間も続いたということです。
その他の主な災害
昭和47年7月豪雨(1972年)
・西三河地方を中心に大雨
・土砂災害も多発
平成3年台風第18号(1991年)
・強風と大雨による被害
・愛知県全域で住宅被害
平成21年台風第18号(2009年)
・高潮と強風による被害
・沿岸部で特に深刻
これらの災害記録を見ると、愛知県・名古屋市は決して水害と無縁ではないことが分かります。
体験談から知る大雨災害の恐ろしさ

数字や記録だけでは伝わらない、実際の災害の恐ろしさ。
ここでは、東海豪雨や平成20年8月末豪雨を実際に体験された方々の声をご紹介します。
東海豪雨での体験談
名古屋市西区在住者(当時30代女性)の体験
「あの日は、夕方頃から雨が強くなってきて、『今日は雨がひどいね』なんて家族で話していました。でも、まさかあんなことになるなんて…。
夜中に近所の人が『川が危ない!』と知らせに来てくれて、慌てて2階に避難しました。1階のリビングは翌朝には完全に水没していて、冷蔵庫も洗濯機も、すべて水の中でした。
一番困ったのは、小さい子どもがいるのに、着替えも何もかも1階にあったことです。2階には布団しかなくて、子どもが寒がって泣いてしまって…。女性としては、下着の替えがないのも本当に困りました。
水が引いた後の片付けも大変で、泥だらけになった家具を運び出すのに、近所の人たちが手伝ってくれました。でも、思い出の写真やアルバムは全部ダメになってしまって、今でも心が痛みます。」
名古屋市南区在住者(当時40代男性)の体験
「東海豪雨の時は、仕事から帰る途中で電車が止まってしまいました。駅から歩いて帰ろうとしたら、道路が川のようになっていて、車が水没しているのを見て、初めて事の深刻さを理解しました。
家に着くまで3時間もかかって、家族は私の安否を心配して待っていました。携帯電話も通じにくくて、連絡が取れなかったんです。
自宅は高台にあったので浸水は免れましたが、近所の方々が避難してきて、一晩中みんなで過ごしました。女性や子どもたちのことを考えると、やはり日頃からの備えが大切だと感じました。」
平成20年8月末豪雨での体験談
岡崎市在住者(当時50代女性)の体験
「あの日は朝から雨が降っていましたが、『いつもの夏の雨かな』と思っていました。でも、夕方から夜にかけて、今まで聞いたことのないような雨音になって…。
近くの川の水位がどんどん上がってきて、市の広報車が避難を呼びかけていました。でも、高齢の義母がいて、避難所まで歩いて行くのは難しく、結局自宅の2階で一夜を過ごしました。
停電もしていたので、懐中電灯の光だけが頼りでした。女性として、特に困ったのは、暗闇でのトイレです。水も出なくなって、衛生面でも不安でした。
翌朝、1階を見ると、畳も家具も全部水に浸かっていました。でも、家族みんな無事だったことが何よりも幸いでした。」
岡崎市在住者(当時20代女性・新婚)の体験
「結婚したばかりで、まだ防災のことなんて全然考えていませんでした。あの豪雨で、初めて災害の恐ろしさを知りました。
夜中に雨音で目が覚めて、窓を見ると、もう外は川のようになっていて。夫と二人で、とりあえず貴重品と着替えを持って2階に避難しました。
でも、実際に避難してみると、女性が必要なものって男性とは違うんですよね。生理用品や化粧品、下着の替えなど、普段当たり前にあるものがないととても困るんです。
それからは、『いざという時の備え』を夫婦で話し合って、女性目線でも防災グッズを準備するようになりました。」
体験談から分かる共通の課題
これらの体験談から、特に女性や家族が直面する課題が見えてきます。
女性特有の困難
・生理用品や下着の替えの不足
・暗闇でのトイレ使用の不安
・子どもの世話をしながらの避難
家族全体の課題
・情報収集の困難
・連絡手段の確保
・高齢者や子どもへの配慮
共通の反省点
・事前の備えの重要性
・地域コミュニティとの連携
・避難判断の難しさ
大雨・台風リスクと現在の備え

過去の災害を振り返ったところで、現在の愛知県・名古屋市が抱える大雨・台風リスクと、行政の取り組みについて見てみます。
愛知県・名古屋市の地理的特性と水害リスク
地形的な特徴
・濃尾平野の中心部に位置
・多くの河川が流れる(庄内川、新川、天白川など)
・海抜ゼロメートル地帯が存在
・伊勢湾に面し、高潮のリスクもある
気候的な特徴
・梅雨期の豪雨
・台風の通り道
・近年増加するゲリラ豪雨
主要河川の氾濫リスク
庄内川・新川流域
・東海豪雨で新川堤防が決壊
・名古屋市西部から北部にかけてのリスク
・内水氾濫の危険性も高い
天白川流域
・名古屋市南部から東部
・都市化による雨水流出量の増加
・短時間豪雨での急激な水位上昇
矢田川・香流川流域
・名古屋市東部から北東部
・住宅密集地での氾濫リスク
・地下街への浸水の可能性
愛知県の現在の防災対策
ハード対策
・河川改修工事の推進
・排水機場の整備
・調節池の建設
・堤防の強化
ソフト対策
・「みずから守るプログラム」の推進
・洪水ハザードマップの作成・配布
・防災情報システムの整備
・水位情報の提供
名古屋市の防災体制
避難情報の発令
・高齢者等避難
・避難指示
・緊急安全確保
避難所の整備
・指定避難所:約400か所
・指定緊急避難場所の指定
・福祉避難所の設置
情報提供体制
・防災情報メール
・防災アプリ「なごや防災」
・防災行政無線
・テレビ・ラジオとの連携
近年の課題と対策
都市型水害への対応
・下水道の整備
・雨水貯留施設の設置
・透水性舗装の推進
高齢化社会への対応
・要支援者の避難支援
・福祉避難所の充実
・地域での見守り体制
女性や子育て世代への配慮
・避難所での授乳スペース確保
・女性用品の備蓄
・子ども向けの防災教育
家族で取り組む大雨・豪雨対策

ここからは、過去の災害の教訓を活かして、私たち家族ができる具体的な防災対策についてお話しします。女性や子育て世代の視点も含めて、優しく分かりやすく説明しますね。
事前の準備(平常時にできること)
✅家族防災会議を開きましょう
まずは、家族みんなで防災について話し合う時間を作ることが大切です。
・避難場所の確認:お住まいの地域の避難所はどこか、家族全員で確認しましょう
・連絡方法の決定:災害時の連絡手段を複数用意しておきます
・役割分担の決定:誰が何を持つか、誰が高齢者や子どもの世話をするかを決めておきます
✅女性・家族目線での備蓄品リスト
一般的な防災グッズに加えて、女性や家族特有のニーズを考慮した備蓄を準備しましょう。
✅基本の備蓄品(3日分以上)
・飲料水(1人1日3リットル)
・非常食(アルファ米、缶詰、レトルト食品)
・懐中電灯・ランタン
・携帯ラジオ
・乾電池
・モバイルバッテリー
✅女性特有の備蓄品
・生理用品(多めに用意)
・基礎化粧品(小分けサイズ)
・ドライシャンプー
・使い捨て下着
・大判のストールやタオル(授乳時の目隠しにも)
✅子育て世代の備蓄品
・粉ミルク・哺乳瓶
・離乳食・子ども用の食品
・おむつ・おしりふき
・子ども用の着替え
・お気に入りのおもちゃ・絵本
・母子手帳・保険証のコピー
✅高齢者がいる家庭の備蓄品
・常備薬(多めに用意)
・お薬手帳のコピー
・大人用おむつ
・介護用品
・入れ歯洗浄剤
大雨・豪雨時の行動(発災時の対応)
●情報収集と避難判断
大雨の時は、正確な情報収集が命を守ります。
●情報収集の方法
・名古屋市防災アプリ「なごや防災」
・愛知県防災情報メール
・テレビ・ラジオの気象情報
・近隣住民との情報共有
●避難のタイミング
・高齢者等避難:高齢者や体の不自由な方、小さなお子さんがいる場合は早めに避難
・避難指示:危険な場所から全員避難
・緊急安全確保:命の危険が迫っている状況
●女性や子どもに配慮した避難準備
・服装:動きやすく、できるだけ肌を露出しない服装を選びます
・履物:滑りにくく、脱げにくい靴を履きます
・持ち物:両手を自由にするため、リュックサックを使用します
・子どもの安全:子どもから目を離さず、必要に応じて抱っこ紐を使用します
避難所での生活
●女性や家族への配慮
避難所での生活を想定して、事前に準備しておきたいことがあります。
●プライバシーの確保
・簡易テント・パーティション
・着替え用のポンチョ
・大判のタオル
●衛生面の配慮
・ウェットティッシュ
・除菌用アルコール
・口腔ケア用品
・体拭き用シート
●子どもへの配慮
・遊び道具・絵本
・子ども用の毛布
・安心できるぬいぐるみ
地域コミュニティとの連携
●ご近所さんとの日頃からの交流
災害時は、お互いに助け合うことが大切です。
・普段からの挨拶や声かけ
・地域の防災訓練への参加
・自治会・町内会の活動への参加
・要支援者の把握と見守り
●女性ならではの視点
女性同士のネットワークを活かして、子育てや高齢者のケアなど、きめ細かい配慮ができる体制を作りましょう。
過去の災害から学ぶ今後の防災対策

最後に、過去の災害から得た教訓を活かして、今後私たちがどのような防災対策を進めていくべきかを考えてみましょう。
東海豪雨・平成20年8月末豪雨から学んだ教訓
●情報の重要性
過去の災害では、正確な情報が得られずに避難が遅れるケースが多くありました。
・複数の情報収集手段の確保
・地域住民同士の情報共有
・高齢者への情報伝達支援
●避難行動の課題
・避難判断の難しさ
・夜間避難の危険性
・要支援者の避難支援
●避難所運営の課題
・女性や子ども、高齢者への配慮不足
・プライバシーの確保
・長期避難生活への対応
現在の課題と今後の対策
●気候変動による豪雨の激化
近年、地球温暖化の影響で、豪雨の頻度と強度が増しています。
●対策の方向性
・ハード対策の限界を認識
・ソフト対策の重要性
・住民一人ひとりの意識向上
●高齢化社会への対応
愛知県・名古屋市でも高齢化が進んでおり、災害時の要支援者が増加しています。
●必要な取り組み
・地域での見守り体制
・福祉避難所の充実
・家族での事前計画
●女性や子育て世代への配慮
災害時は、女性や子どもが特に困難な状況に置かれることが多いです。
●改善すべき点
・避難所の環境整備
・女性用品の備蓄
・授乳・おむつ替えスペースの確保
・女性の避難所運営への参画
地域コミュニティの再生
●つながりの重要性
過去の災害では、地域住民同士の助け合いが大きな力となりました。
●今後の課題
・近隣住民との関係構築
・防災組織の活性化
・世代を超えた交流
●女性の視点を活かした防災
女性ならではの細やかな配慮が、災害時の住民全体の安全・安心につながります。
●具体的な取り組み
・女性防災リーダーの育成
・子育て世代の防災意識向上
・高齢者サポート体制の構築
今日からできる小さな一歩
✅家族での取り組み
・月1回の家族防災会議
・備蓄品の定期点検
・避難所の下見
・地域の防災訓練への参加
✅地域での取り組み
・ご近所さんとの挨拶
・自治会・町内会への参加
・要支援者の把握と見守り
・防災知識の共有
✅個人での取り組み
・防災に関する正しい知識の習得
・情報収集手段の確保
・体力作りと健康管理
・防災意識の継続
まとめ
愛知県・名古屋市で起きた過去の大雨災害は、私たちに多くの教訓を与えてくれました。
✅大切なポイント
災害は必ず繰り返す:過去の災害から学び、備えを怠らないことが重要です
女性や家族の視点が重要:一人ひとりの状況に応じた配慮が必要です
地域のつながりが力になる:普段からのコミュニティ作りが災害時の支えとなります
情報と判断力が命を守る:正確な情報収集と適切な避難判断が大切です
小さな準備の積み重ね:完璧を目指さず、できることから始めることが大切です
私たちにできること
災害に対する備えは、決して他人事ではありません。愛知県・名古屋市に住む私たち一人ひとりが、過去の災害から学び、家族や地域を守る準備をしていくことが大切です。
今日から、まずは家族で防災についての話し合い。そして、備蓄品の確認や避難場所の下見など、できることから少しずつ始めていきましょう。
大切な家族と安心して暮らせる地域を作るために、一緒に防災に取り組んでいきましょうね。
参考資料
この記事は、過去の災害記録と被災者の体験談を基に、愛知県・名古屋市での防災対策向上を目的として作成されました。防災に関する最新情報は、各自治体の公式サイトでご確認ください。