災害が起きたとき、「トイレ」はすぐに深刻な問題になります。断水、停電、建物の損壊などが発生すれば、たとえ自宅にトイレがあっても使えなくなることがありますし、避難所でもすぐにトイレが用意されているとは限りません。
実際、東日本大震災や熊本地震では、発災直後からトイレ不足と断水が深刻化し、発災からわずか3時間以内にトイレが必要となった人は約4割、6時間以内にトイレが必要となった人は、全体の約7割にも上ったというデータもあります。
そんな中、不安解消アイテムとして注目されているのが「防災トイレ」「ポータブルトイレ」。今回は、高齢者/シニア世代にこそ備えておきたい防災トイレの選び方や使い方について、解説していきます。
なぜ防災トイレが必須なの?

災害時、トイレは「命を守る次に大切な場所」です。特に高齢者/シニア世代にとっては、その重要性がより高まります。
排泄を我慢することの危険性
高齢になると排泄回数が増えるため、断水やトイレ不具合が起こると便秘や脱水、さらには尿路感染症につながる恐れがあります。実際、災害時にトイレを我慢したことで健康被害が生じたケースが多く報告されており、携帯トイレがあるだけで健康リスクが大きく減るんです 。
避難所や仮設トイレの環境の問題
多くの簡易トイレは暗く、段差があり、座る・立ち上がる動作が必要になるため、転倒リスクが高い。高齢者施設では、暗いトイレでの立ち上がりが難しく、災害時のケアにはポータブルトイレやおむつ併用が推奨されています。
さらに、日本トイレ研究所によれば、災害発生から6時間以内に約7割の人がトイレに行きたくなるともいわれており、それを待つ間に便意をこらえるのは身体に大きな負担となります。
つまり、家庭に「防災トイレ」を備えておくことは、健康・衛生・転倒予防・プライバシー確保など、シニアにとって必要な防災対策の中でも特に優先すべき項目。急に不安になる状況でも、「自分のトイレがある」という安心感が、ご家族の心と身体の安全につながるんですね。
防災トイレの選び方

いざというときに安心して使える防災トイレ。選ぶときのポイントは「安全・衛生・使いやすさ」です。
✅ 折りたたみ式ポータブルトイレ
軽くて持ち運びやすく、収納もしやすいタイプ。耐荷重が150~200kg程度あるものが多く、しっかりと安定感があります。使用後は小さく畳んで収納可能です。
✅ 携帯トイレ+凝固剤セット
使い捨てタイプで、便や尿を素早く固めてくれます。
臭いを閉じ込められる袋がついているものを選ぶと、衛生面でも安心。トイレが遠くまで設置できない場合や、スペースが限られているときにも重宝します。
✅ プライバシー配慮グッズ
目隠しシートや簡易テントを一緒に備えておけば、公園や避難所といった人目の多い場所でも安心して使用できます。気持ちの面でも落ち着いて使える工夫は大切です。
✅ 家具調(介護用)ポータブルトイレ
肘掛け、背もたれ、高さ調整など、使いやすさが工夫されたタイプ。
特に「ちびくまくん」のような製品は、立ち座りがしやすく、家庭での介護にも重宝されています。
おすすめ防災トイレ3選

【防臭力・凝固剤・手袋&廃棄袋がそろっているかがポイント】
防災用トイレを選ぶとき、「防臭力」「凝固剤」「手袋や廃棄用のセット」は必ずチェックしておきたい大切なポイントです。
特にシニアの方にとっては、操作が簡単で、においや衛生面への配慮がしっかりされていることが安心につながります。
スツーレ® Step(折りたたみ式ポータブルトイレ)
持ち運びやすさと安定性を両立した一台
・折りたたみ可能で収納に場所を取らず、使いたいときだけ広げられる設計
・約150kgまで耐えられる安定構造で、座ったときの安心感がある
・座面の下に専用の処理袋や凝固剤をセットして使用。においも漏れにくい構造
・凝固剤や廃棄袋は別売りが多いため、忘れずに準備を
おすすめポイント:ポータブルながらしっかり安定し、家庭用椅子感覚で使える。トイレ空間が確保しづらい場所でも活躍。
ケンユー 緊急トイレセット「トイレONE」
防臭・衛生の3点セットがそろった定番商品
・便を固める凝固剤がすぐに反応し、臭いを閉じ込めて処理しやすい
・手袋・廃棄袋も1回分ずつセットになっていて、誰でも清潔に使える
・コンパクトな箱に複数回分を収納。持ち運びしやすく家庭でも車でも便利
おすすめポイント:シニアに嬉しい「開けてすぐ使える」セット。袋タイプで便器がなくても使えるので、避難所や車中泊にも対応。
BCPトイレパック(日本セイフティー)
病院・介護施設も導入する高性能な防臭&吸収パック
・医療や福祉の現場で採用されている信頼の吸収力と防臭力
・凝固剤がしっかり水分と臭いを閉じ込め、長時間保管しても不快感を軽減
・各パックに処理袋・手袋つき。安心して1回ずつ使い切れる
おすすめポイント:高齢者施設の備蓄としても評価が高く、衛生面・使いやすさともにバランス◎。トイレが設置できない場面でも安心です。
セット例と使い方

必要なアイテムをひとまとめにした「防災トイレセット」を作っておくと、いざというときにも安心です。
アイテム | 用途とポイント |
---|---|
折りたたみトイレ本体 | 安定感・高さ調整ができ、使わないときは省スペース収納が可能 |
凝固袋×5枚 | 臭い対策・衛生的処理に欠かせないアイテム |
トイレットペーパー+封緘手袋 | 使い捨てにして清潔を保つ |
消毒シート | 清拭や周辺の除菌にも活用できる万能アイテム |
目隠しシート | プライバシー確保と安心感につながる |
ミニLEDライト | 夜間や停電時でも安全に使用できる |
ごみ袋・現金・連絡先メモ | 緊急時の情報管理やごみ処理に |
使用手順はとても簡単
- 折りたたみ式トイレを広げる
- 凝固袋をセットする
- 使用後は袋を密閉し、ゴミ袋へ廃棄
- 手や座面を消毒シートで拭いて清潔を保つ
備えるために必要な準備

✅ 設置場所の確保
寝室や玄関、既存トイレの隣など、「すぐに使える場所」に準備しておきましょう。
✅ 定期的なチェック
月に一度は、次の項目をチェックしておきましょう。
・折りたたみ部分の可動状態
・凝固剤や消耗品の使用期限
・電池式ライトの電池切れ
✅ 家族での共有・実習
いざというときに慌てないよう、
「誰がどこに設置するか」「どうやって使うか」を家族で共有しておくと安心です。
✅ 関連グッズとまとめて収納
ラジオやライト、飲料水などと一緒に収納ケースにまとめておけば、必要なときすぐに持ち出せます。
まとめ
シニア世代が災害時でも安心して暮らせるためには、トイレ環境の確保が欠かせません。
「使いやすさ」「衛生面」「プライバシー」への配慮が、心と体の健康を守るカギになります。
折りたたみ式・家具調・携帯タイプなど、さまざまな防災トイレがありますが、
大切なのは “自分に合ったものを選び、使い方を知っておくこと”。
日頃から備えておくことで、非常時でも落ち着いて対応でき、
普段の暮らしに近い安心感を保つことができます。
ぜひ、ご家庭でも一度「防災トイレ」を見直してみてください。